13039.jpg
人工知能が助ける「未来の自動車」 予想されるトラブルとは?(自動運転車と法・下)
2014年07月09日 11時13分

グーグルが開発を進める「自動運転車」。ハンドルもアクセルもブレーキペダルもなく、目的地を入力するだけで、行きたいところまで連れていってくれる。

まるで夢のような話だが、実際は、グーグルカーのような「完全自動型」ではなく、これまで通り、人間のドライバーが運転しつつ、人工知能の支援を受けるという「半自動型」の車の実用化が先行しそうだ。

トヨタが開発している自動運転車も「半自動型」で、「熟練者並みの運転でドライバーを支援するための技術」と位置づけている。完全自動ではなく、ペーパードライバーでも安心して運転できるような技術を目指しているそうだ。そのような「半自動型」にはどんな法的な問題があるのだろうか。小林正啓弁護士に聞いた。

グーグルが開発を進める「自動運転車」。ハンドルもアクセルもブレーキペダルもなく、目的地を入力するだけで、行きたいところまで連れていってくれる。

まるで夢のような話だが、実際は、グーグルカーのような「完全自動型」ではなく、これまで通り、人間のドライバーが運転しつつ、人工知能の支援を受けるという「半自動型」の車の実用化が先行しそうだ。

トヨタが開発している自動運転車も「半自動型」で、「熟練者並みの運転でドライバーを支援するための技術」と位置づけている。完全自動ではなく、ペーパードライバーでも安心して運転できるような技術を目指しているそうだ。そのような「半自動型」にはどんな法的な問題があるのだろうか。小林正啓弁護士に聞いた。

●「ブレーキアシスト」や「自動駐車」などの実用化が進む

小林弁護士は、グーグルカーのような「完全自律運転自動車」と比較しながら説明する。

「自動車が人間の運転の一部を代行したり、支援したりする技術は『運転支援技術』と呼ばれています。すでに、高速道路でも活用を想定して、ブレーキアシストや自動駐車技術が実用化されています。

このような自動車が人身事故を起こした場合、運転支援中であったとしても、現行の自動車損害賠償法が適用されます。つまり、自賠責保険の範囲内で、被害救済がなされることになります

実は、完全な自動運転よりも、『運転支援技術』の方がさまざまな法的問題が生じる可能性があるのです」

●人間とコンピューターが「責任」を押し付け合う?

いったい、どんな法的問題が生じるのだろうか?

「自賠責保険の範囲を超えて、十分な賠償金を得ようとした場合、ドライバーの過失を立証する必要があります。ここで重大な障害に直面することが予想されます」

どんな障害なのだろうか。

「『運転支援技術』は、人間とコンピューターの、2人のドライバーが協働して運転しているようなものです。

それで事故が起きると、人間とコンピューターが、互いに責任を押しつけあう事態が予想されます。そうなると、被害者は、両方に責任があることを証明しない限り、法的には、どちらの責任も問えないことになりかねません。

被害者を救済するうえで、問題が生じることが明らかなので、法律の整備を急ぐ必要があります」

なるほど、人間とコンピューターのどちらにどの程度の責任があるのかを明らかにできない場合は、法的な対応が難しくなってしまうということだ。

「結局のところ、『完全自律運転自動車』であっても、『運転支援技術』であっても、本格的な普及のためには、法改正や、保険制度の整備が不可欠ということになります」

まだまだ自動運転の技術は発展途上だが、世の中を大きく変える可能性がある。今後は新たな法制度を議論することが必要になってくるだろう。

(弁護士ドットコムニュース)

新着記事
一般的なニュースのサムネイル

同性婚訴訟、東京高裁が「合憲」判断 全国で唯一判断割れる結果に…弁護団「きわめて不当な判決だ」

性的マイノリティの当事者が、同性同士が結婚できないのは憲法に反するとして、国を訴えた裁判(東京2次訴訟)の控訴審で、東京高裁(東亜由美裁判長)は11月28日、現行法の規定を「合憲」と判断した。

一般的なニュースのサムネイル

最高裁で史上初の「ウェブ弁論」、利用したのは沖縄の弁護士「不利益にならない運用を」

裁判の口頭弁論をオンラインで実施する「ウェブ弁論」が今月、初めて最高裁でおこなわれた。

一般的なニュースのサムネイル

夫の「SM嗜好」に苦しむ妻、望まぬ行為は犯罪になる?離婚が認められる条件は?

パートナーの理解を超えた「性的嗜好」は、離婚の正当な理由になるのでしょうか。弁護士ドットコムには、そんな切実な相談が寄せられています。

一般的なニュースのサムネイル

国分太一さん「答え合わせしたい」日テレの拒否は「適正手続」の観点から問題?

コンプライアンスの問題を理由に番組を降板し、活動を休止していた元TOKIOの国分太一さんが、11月26日に東京霞が関で記者会見を開きました。

一般的なニュースのサムネイル

国分太一さん「録音の削除求められた」消さないと違法だったの?弁護士が解説

解散したアイドルグループ「TOKIO」の国分太一さんが11月26日、東京都内で記者会見を開き、日本テレビ側から番組降板を告げられた際、会話を録音しようとしたところ、同席した弁護士からデータの削除を求められたと明らかにした。一般論として、法的に録音の削除に応じないといけないのだろうか。

一般的なニュースのサムネイル

「サケ漁はアイヌ文化の主要な部分」日弁連、アイヌ施策推進法の改正求める意見書

日本弁護士連合会(日弁連)は11月20日、「アイヌの人々の誇りが尊重される社会を実現するための施策の推進に関する法律」(アイヌ施策推進法)の5年見直しに際し、アイヌ集団の権利保障やサケ漁の権利の法整備などを求める意見書を公表した。同法附則第9条の見直し規定に基づき、文部科学大臣や農林水産大臣など関係機関に提出した。

もっと見る