2888.jpg
「Z世代の迷惑行為動画」と「中高年男性カスハラ」の決定的な違い 池内教授に聞く
2023年03月29日 10時07分
#カスタマーハラスメント

若者が回転ずし店で迷惑行為をしたり、アルバイト先でいたずらをしたりする様子を撮影した動画投稿が相次いでいる。回転ずし店の一連の迷惑行為では逮捕者も出た。

消費者心理やカスタマー・ハラスメント(カスハラ)問題に詳しい関西大学の池内裕美教授は、若い世代で迷惑行為が相次ぐ背景について「悪いことだと認識していながら、SNSで目立ちたいという自己承認欲求を満たすための行為です。社会が甘くなり、怒られない若者が増えたことも背景にあります」と説明する。高齢者のカスハラと若者の迷惑行為の違いや、対策について池内教授に聞きながら考えた。(ライター・田中瑠衣子)

若者が回転ずし店で迷惑行為をしたり、アルバイト先でいたずらをしたりする様子を撮影した動画投稿が相次いでいる。回転ずし店の一連の迷惑行為では逮捕者も出た。

消費者心理やカスタマー・ハラスメント(カスハラ)問題に詳しい関西大学の池内裕美教授は、若い世代で迷惑行為が相次ぐ背景について「悪いことだと認識していながら、SNSで目立ちたいという自己承認欲求を満たすための行為です。社会が甘くなり、怒られない若者が増えたことも背景にあります」と説明する。高齢者のカスハラと若者の迷惑行為の違いや、対策について池内教授に聞きながら考えた。(ライター・田中瑠衣子)

●若者は悪いことをしている自覚がある一方、中高年は自分が正義だと認識

池内教授が行った調査ではカスハラは中高年男性に多いという結果が出ている。池内教授は今回、回転ずし店で起きた若者による一連の迷惑動画と、中高年男性のカスハラには動機や認識に大きな違いがあるという。

「迷惑行為をするのはZ世代と呼ばれる10~20代半ばの若者で、1人ではなくグループで来店します。店に不満があるわけではなく、目立ちたいという悪ふざけのノリです。SNSで拡散されることで、自己承認欲求を満たす快楽も求めています」。迷惑行為について「悪いことをしている」という自覚もある。現実ではうまくいかないことが、SNS上ではコントロールでき、満足感を得ることができることも多い。

一方、中高年男性のカスハラは単独のケースが大半だ。若者の迷惑行為の目的が「単なるその場の快楽」なのに対し、中高年のカスハラの目的は「個人的な問題の解決」と異なる。また、高学歴、高所得、社会階層が高いという特徴もある。「自分が悪いことや、迷惑行為をしている」という認識がある人は少なく「会社や店にとって良いことを言ってあげている」という考えだ。

中高年のカスハラの根底にあるのは、定年退職などで社会との接点が薄れる寂しさや不安だ。コロナ禍でキャッシュレス決済など急速にデジタル化が進み、時代の波についていけない焦燥感もある。

●本人が特定されるなどいたずら以上の社会的制裁を受けている

迷惑動画では、若者がアルバイト先のコンビニや飲食店でいたずらをする様子を撮影した「バイトテロ」も問題になっている。最近ではコンビニでアルバイトをする女子高校生が、店内で商品のポテトをつまみ食いしたり、掃除用モップを手に飛び跳ねたりする動画がツイッターで拡散された。客か店員かの違いはあるが、根本は回転ずし店の迷惑行為と一緒だ。

昔からこのようないたずらはあったと思われるが、SNSの普及とともに拡散されやすくなり、問題が表面化しやすくなった。池内教授は「子どもが家や学校で叱られなくなり、歯止めがきかなくなっていることも背景にあるのではないでしょうか」と見る。

●法律で罰せられることは、抑止力にはなる

若い世代の迷惑行為を減らすにはどんな対策が有効なのか。

今回、回転ずし店への迷惑行為では逮捕者が出た。「法律で罰せられることは、若者にとってはシンプルに怖いことなので抑止力にはなると思います。社会が甘くなっている今、こうした法的措置は有効です」

ただ、法的措置は悪質なケースに限られるため、前の段階での対策も必要だろう。池内教授は「社会全体の消費者教育が重要です。家庭での教えはもちろん、自治体の消費生活センターで行っている消費者教育や講師派遣を活用し、幼少期から賢い消費者として生活するためのマナーや知識を徹底して教える必要があります。ここまでしなければならないのは情けない話ではありますが…」と話す。

若者に対しては、インターネット上で動画が拡散されることによって自分や家族にどんな影響が出るのかや、逮捕者まで出た過去のケースを伝えることで、迷惑行為の抑止力になる。

●いたずらをした若者たちへの救済も必要

一方で、池内教授は社会的制裁を受けた若者たちへの救済も必要と指摘する。回転ずし店の迷惑行為やバイト先でいたずらをした当事者は、顔だけではなく居住する地域や学校まで特定されるなど、制裁を受けている。

池内教授は「若者の迷惑行為そのものを擁護する気はありませんが、子どもたちはいたずらの内容以上の社会的制裁を受けたと思います。どういう形かは考える必要がありますが、なぜ迷惑行為に至ったのか反省の弁を述べる場をつくることが、更生の機会になるのではないでしょうか」と話している。

新着記事
一般的なニュースのサムネイル

同性婚訴訟、東京高裁が「合憲」判断 全国で唯一判断割れる結果に…弁護団「きわめて不当な判決だ」

性的マイノリティの当事者が、同性同士が結婚できないのは憲法に反するとして、国を訴えた裁判(東京2次訴訟)の控訴審で、東京高裁(東亜由美裁判長)は11月28日、現行法の規定を「合憲」と判断した。

一般的なニュースのサムネイル

最高裁で史上初の「ウェブ弁論」、利用したのは沖縄の弁護士「不利益にならない運用を」

裁判の口頭弁論をオンラインで実施する「ウェブ弁論」が今月、初めて最高裁でおこなわれた。

一般的なニュースのサムネイル

夫の「SM嗜好」に苦しむ妻、望まぬ行為は犯罪になる?離婚が認められる条件は?

パートナーの理解を超えた「性的嗜好」は、離婚の正当な理由になるのでしょうか。弁護士ドットコムには、そんな切実な相談が寄せられています。

一般的なニュースのサムネイル

国分太一さん「答え合わせしたい」日テレの拒否は「適正手続」の観点から問題?

コンプライアンスの問題を理由に番組を降板し、活動を休止していた元TOKIOの国分太一さんが、11月26日に東京霞が関で記者会見を開きました。

一般的なニュースのサムネイル

国分太一さん「録音の削除求められた」消さないと違法だったの?弁護士が解説

解散したアイドルグループ「TOKIO」の国分太一さんが11月26日、東京都内で記者会見を開き、日本テレビ側から番組降板を告げられた際、会話を録音しようとしたところ、同席した弁護士からデータの削除を求められたと明らかにした。一般論として、法的に録音の削除に応じないといけないのだろうか。

一般的なニュースのサムネイル

「サケ漁はアイヌ文化の主要な部分」日弁連、アイヌ施策推進法の改正求める意見書

日本弁護士連合会(日弁連)は11月20日、「アイヌの人々の誇りが尊重される社会を実現するための施策の推進に関する法律」(アイヌ施策推進法)の5年見直しに際し、アイヌ集団の権利保障やサケ漁の権利の法整備などを求める意見書を公表した。同法附則第9条の見直し規定に基づき、文部科学大臣や農林水産大臣など関係機関に提出した。

もっと見る